読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

イトーのブログ

ここはゲーム、まんが、映画の備忘録帳でござい 自分用なので文章が自由

ロボットに乗った話です

 こんにちは、イトーです。

 

f:id:saki9098:20170115203510j:plain

 

 それは仕事がお昼休憩になった時のことでした。
 私は買ってきたハンバーガーを食べながら、オフィスの共有スペースにあるXbox 360 を起動します。何となく一世代前のゲームを遊びたい気分になったからです。
 何がいいかな。ロボものがいいかな。と選んだパッケージからディスクをハードに読み込ませている時。

 突然、モニタに繋いだイヤホンから重々しい声が響きました。

《突然の通信、失礼する。これはハードゲーマーたる諸君らに告げる、開戦の狼煙である》

 驚いて周囲を見回します。しかしちょうどお昼時なこともあって、あたりには人影が一人も見えません。
 では、この声は一体誰が?

《諸君らは突然響いたこの声に驚いていることだろう。しかし恐れることはない。諸君らは、この地球から選ばれた戦士なのだ!》

 そうか、戦士なのか!
 相変わらず何を言っているのかは分かりませんが、俄然意気が高まってきました。

《諸君らには各々の機体で戦場に出てもらう。我々人類はこの来るべき時のために、ゲームプレイ中の機体を現実化する技術を開発してきたのだ!》

「んっ?」

《敵は地球外から攻めてきた謎の機械生命体。5カウント後、諸君らの身体はゲーム画面内の機体に移り、そのまま現実の戦場へワープする。各機の武運を祈る!》


 5カウントはあっさり終了。

 さっきまで広いオフィスにいたはずなのに、気づけば周囲は狭いコックピットに覆われています。慌ててコックピットから天井のハッチを開けて、外を覗きました。
 そこには、今まで見たことのない風景が広がっていました。

 どこまでも続く平野。生い茂る若草と天地を二分する上空は、これより放たれる銃火と硝煙の気配を全く感じさせない、突き抜けるような蒼天が広がっています。

 そして更に異彩を放つのが、平野に立つ数々の巨大人型兵器たち。見覚えあるものもあれば、全く記憶にないものもありました。
 イヤホンから続々と皆の名乗りが届きます。

 

「俺は『ガングリフォン』のヤス。よろしくな!」

「僕は『アーマードコア for Answer』のトオル!」

「あっしは『ボーダーブレイク』の牛田!」

 他にも『メタルウルフカオス』『タイタンフォール』『フロントミッション』etc,etc...

 恰好いいロボたちが、それぞれ地を走り、空を飛び戦場へと発進していきます。
 その中でただ一人、私だけが取り残されていました。

 戦う気がないわけではないのです。私だってこの大地に住まう生命の一員。地球を守るために命を懸ける覚悟がないはずがありません。
 だというのに! ああ、どうしてよりにもよって、「このゲーム」を遊んでいるときに!


 耳元でノイズ。誰かからの通信でしょう。


《こちら『重装騎兵レイノス』のジロー。どうした、発進できてないようだが?》
「この2017年にどうしてレイノス……」
《うるさいな。それで、キミの機体は何なんだ? 妙にミリタリーチックというか、現実志向なフォルムだけど》

 一瞬、返答に詰まります。しかし黙秘したところで何か良いことがあるわけでもありません。私はぽつりと、

重鉄騎

 しばしの沈黙。
《がんばれよ》とどこか憐れむような響きの声の後、通信は途切れました。

 

 遠雷のような轟音が遠くから大気を伝わり、腹の底を響かせます。もう戦闘が始まっているようです。
 私もこうしてはいられません。ええと、操作は……あ、Xbox 360 コントローラーとKinect が内装に繋がってますね。操作系はそのままなのか。慣れてるからいいけど。
 私はコントローラーを握り直すと、左スティックを倒しながら高らかに叫びました。「重鉄騎」はKinect音声認識には非対応だけど気分的に。

重鉄騎、発進!」

 ……。
 …………。

 動きませんね。
 ああ、そうそう。先に起動レバーを引いて、エンジンを始動しないといけないんですよ。Kinectのモーションセンサーに認識されるよう右手を動かすと、少し前方に半透明の青い腕が浮かびました。これが実際だったらゲーム画面に映るはずの、ゲームキャラクターの腕を表しているのでしょう。まどろっこしいな。

 というわけで右腕をエンジンキーめがけて動かします。

 青い腕が持ち上がり、自爆スイッチのカバーを開けました。違うよ。


 焦ってカバーを閉じ直そうと身体を動かしますが、画面の腕はフラフラとあっちこっち行き来するだけで何かを掴もうとすらしてくれません。誤って自爆ボタンを押しそうで怖い。
 耳元で短いノイズ。誰かから通信が入りました。

《どうしたっ! 何を踊っている!》

 戦ってるんです。文句はモーションセンサーの精度に言って。

《これはっ! 戦争だぞ! 言い訳をっ! するなっ!》

 何だか定期的に声が跳ねてらっしゃる方です。
 いくつか頭の中で候補を出して、これかなと思うモノをピックアップ。

「もしかして、小ジャンプ移動されてます?」
《そうなんだよ! アーマードコア3をやってたせいでっ!》

 3までだと通常のブーストダッシュより、小刻みにホッピングした方が燃費いいですからね。開発者的には望ましくなかったようで、4から消えましたけど。
 イヤホンの向こうでガションガションと定期的に響いていたジャンプ音が静まります。どうされたのかなと思ったら、

《酔った》
「ですよね……」
《AC4系列にすればよかった……》

 あれはあれで速すぎて中の人死んでしまいそうですけど。


 それから5分ほどしてどうにか起動レバーの操作に成功。
 移動だけはコントローラーでできるのが幸いでした。低速前進しながら(高速移動するとオーバーヒートするので)砂埃立つ戦場を進んでいくと、接敵。宇宙生命体らしき敵機はこちらと同じくらいの大きさです。見たことのない機影でしたが、「Z.O.E.」のラプターに似ています。


 正面戦闘における重鉄騎のセオリーは、『装甲シャッター』――覗き窓のスリットを塞ぐことです。一番脆弱な部分ですからね。
 覗き窓を塞げば、当然視界も塞がります。この状態で行える選択は3つ。

 1つ目は上部のハッチを開けて、外を直接覗くこと。
 視界は一番確保しやすいですが、生身を晒すことになるので撃たれれば死にます。却下。

 2つ目はモニターを点けること。ただし白黒で、しかもヤケクソに小さい。却下。

 3つ目は望遠鏡のようなペリスコープを下ろすこと。レンズが割れることもありますが、これが一番マシでしょう、

 
「『重鉄騎』、接敵! これより近接戦闘へ移る!」

 気分を乗せるために再び宣言。これから行うは決死のやり取り。戦場で命を奪うのは敵の凶弾ではなく、自らの怯懦なのです。
 私は颯爽と架空の腕でペリスコープを下ろし、


 ああっ、なぜか覗き窓のカバーを外してしまった!

 ああっ、覗き窓から銃弾が飛び込んで部下が死んだ!

 ああっ、別の部下が狂乱して脱出しようとしてる! 殴って止めなきゃ!

 

 部下との髪を掴みあっての格闘を終え、ゼェハァと息を吐いていると、ノイズ混じりの通信が届きました。

《各員に通達する。状況終了、繰り返す、状況終了》

 息は切れ、殴り返された頬がじんじんと痛みます。いつの間にか眼前にいた敵機も消えており、私はこの鉄と油の散る戦場で、無事に生き残ったことを知りました。

《諸君、よく戦い抜いてくれた。敵機は全て撃破、および逃走。我々の勝利だ》
「……終わったのか、戦争が………」


  胸の中が空洞になってしまったように、虚しさが私の中を吹き抜けていくのが分かります。
 緩慢な動作で天井のハッチを開け、上半身を外へ乗り出しました。
 あちこちで煙が立ち上る戦場を眺めながら、私は何も生み出すことのない戦争の無益さに感じ入ります。
 そして狭いコックピットへと戻り…………一人、泣きました。


----------

 操作難度の高いゲームもいいですが、やっぱりシンプル操作の方が気楽ですねえ。

 そう思って「カスタムロボ」を久々に遊んでたら、聞こえたんですよ。またあの声が。そしてちょうど今、5カウントを数え始めたんですよ。5、4,

3、2……