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イトーのブログ

ここはゲーム、まんが、映画の備忘録帳でござい 自分用なので文章が自由

ロボットに乗った話です

 こんにちは、イトーです。

 

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 それは仕事がお昼休憩になった時のことでした。
 私は買ってきたハンバーガーを食べながら、オフィスの共有スペースにあるXbox 360 を起動します。何となく一世代前のゲームを遊びたい気分になったからです。
 何がいいかな。ロボものがいいかな。と選んだパッケージからディスクをハードに読み込ませている時。

 突然、モニタに繋いだイヤホンから重々しい声が響きました。

《突然の通信、失礼する。これはハードゲーマーたる諸君らに告げる、開戦の狼煙である》

 驚いて周囲を見回します。しかしちょうどお昼時なこともあって、あたりには人影が一人も見えません。
 では、この声は一体誰が?

《諸君らは突然響いたこの声に驚いていることだろう。しかし恐れることはない。諸君らは、この地球から選ばれた戦士なのだ!》

 そうか、戦士なのか!
 相変わらず何を言っているのかは分かりませんが、俄然意気が高まってきました。

《諸君らには各々の機体で戦場に出てもらう。我々人類はこの来るべき時のために、ゲームプレイ中の機体を現実化する技術を開発してきたのだ!》

「んっ?」

《敵は地球外から攻めてきた謎の機械生命体。5カウント後、諸君らの身体はゲーム画面内の機体に移り、そのまま現実の戦場へワープする。各機の武運を祈る!》


 5カウントはあっさり終了。

 さっきまで広いオフィスにいたはずなのに、気づけば周囲は狭いコックピットに覆われています。慌ててコックピットから天井のハッチを開けて、外を覗きました。
 そこには、今まで見たことのない風景が広がっていました。

 どこまでも続く平野。生い茂る若草と天地を二分する上空は、これより放たれる銃火と硝煙の気配を全く感じさせない、突き抜けるような蒼天が広がっています。

 そして更に異彩を放つのが、平野に立つ数々の巨大人型兵器たち。見覚えあるものもあれば、全く記憶にないものもありました。
 イヤホンから続々と皆の名乗りが届きます。

 

「俺は『ガングリフォン』のヤス。よろしくな!」

「僕は『アーマードコア for Answer』のトオル!」

「あっしは『ボーダーブレイク』の牛田!」

 他にも『メタルウルフカオス』『タイタンフォール』『フロントミッション』etc,etc...

 恰好いいロボたちが、それぞれ地を走り、空を飛び戦場へと発進していきます。
 その中でただ一人、私だけが取り残されていました。

 戦う気がないわけではないのです。私だってこの大地に住まう生命の一員。地球を守るために命を懸ける覚悟がないはずがありません。
 だというのに! ああ、どうしてよりにもよって、「このゲーム」を遊んでいるときに!


 耳元でノイズ。誰かからの通信でしょう。


《こちら『重装騎兵レイノス』のジロー。どうした、発進できてないようだが?》
「この2017年にどうしてレイノス……」
《うるさいな。それで、キミの機体は何なんだ? 妙にミリタリーチックというか、現実志向なフォルムだけど》

 一瞬、返答に詰まります。しかし黙秘したところで何か良いことがあるわけでもありません。私はぽつりと、

重鉄騎

 しばしの沈黙。
《がんばれよ》とどこか憐れむような響きの声の後、通信は途切れました。

 

 遠雷のような轟音が遠くから大気を伝わり、腹の底を響かせます。もう戦闘が始まっているようです。
 私もこうしてはいられません。ええと、操作は……あ、Xbox 360 コントローラーとKinect が内装に繋がってますね。操作系はそのままなのか。慣れてるからいいけど。
 私はコントローラーを握り直すと、左スティックを倒しながら高らかに叫びました。「重鉄騎」はKinect音声認識には非対応だけど気分的に。

重鉄騎、発進!」

 ……。
 …………。

 動きませんね。
 ああ、そうそう。先に起動レバーを引いて、エンジンを始動しないといけないんですよ。Kinectのモーションセンサーに認識されるよう右手を動かすと、少し前方に半透明の青い腕が浮かびました。これが実際だったらゲーム画面に映るはずの、ゲームキャラクターの腕を表しているのでしょう。まどろっこしいな。

 というわけで右腕をエンジンキーめがけて動かします。

 青い腕が持ち上がり、自爆スイッチのカバーを開けました。違うよ。


 焦ってカバーを閉じ直そうと身体を動かしますが、画面の腕はフラフラとあっちこっち行き来するだけで何かを掴もうとすらしてくれません。誤って自爆ボタンを押しそうで怖い。
 耳元で短いノイズ。誰かから通信が入りました。

《どうしたっ! 何を踊っている!》

 戦ってるんです。文句はモーションセンサーの精度に言って。

《これはっ! 戦争だぞ! 言い訳をっ! するなっ!》

 何だか定期的に声が跳ねてらっしゃる方です。
 いくつか頭の中で候補を出して、これかなと思うモノをピックアップ。

「もしかして、小ジャンプ移動されてます?」
《そうなんだよ! アーマードコア3をやってたせいでっ!》

 3までだと通常のブーストダッシュより、小刻みにホッピングした方が燃費いいですからね。開発者的には望ましくなかったようで、4から消えましたけど。
 イヤホンの向こうでガションガションと定期的に響いていたジャンプ音が静まります。どうされたのかなと思ったら、

《酔った》
「ですよね……」
《AC4系列にすればよかった……》

 あれはあれで速すぎて中の人死んでしまいそうですけど。


 それから5分ほどしてどうにか起動レバーの操作に成功。
 移動だけはコントローラーでできるのが幸いでした。低速前進しながら(高速移動するとオーバーヒートするので)砂埃立つ戦場を進んでいくと、接敵。宇宙生命体らしき敵機はこちらと同じくらいの大きさです。見たことのない機影でしたが、「Z.O.E.」のラプターに似ています。


 正面戦闘における重鉄騎のセオリーは、『装甲シャッター』――覗き窓のスリットを塞ぐことです。一番脆弱な部分ですからね。
 覗き窓を塞げば、当然視界も塞がります。この状態で行える選択は3つ。

 1つ目は上部のハッチを開けて、外を直接覗くこと。
 視界は一番確保しやすいですが、生身を晒すことになるので撃たれれば死にます。却下。

 2つ目はモニターを点けること。ただし白黒で、しかもヤケクソに小さい。却下。

 3つ目は望遠鏡のようなペリスコープを下ろすこと。レンズが割れることもありますが、これが一番マシでしょう、

 
「『重鉄騎』、接敵! これより近接戦闘へ移る!」

 気分を乗せるために再び宣言。これから行うは決死のやり取り。戦場で命を奪うのは敵の凶弾ではなく、自らの怯懦なのです。
 私は颯爽と架空の腕でペリスコープを下ろし、


 ああっ、なぜか覗き窓のカバーを外してしまった!

 ああっ、覗き窓から銃弾が飛び込んで部下が死んだ!

 ああっ、別の部下が狂乱して脱出しようとしてる! 殴って止めなきゃ!

 

 部下との髪を掴みあっての格闘を終え、ゼェハァと息を吐いていると、ノイズ混じりの通信が届きました。

《各員に通達する。状況終了、繰り返す、状況終了》

 息は切れ、殴り返された頬がじんじんと痛みます。いつの間にか眼前にいた敵機も消えており、私はこの鉄と油の散る戦場で、無事に生き残ったことを知りました。

《諸君、よく戦い抜いてくれた。敵機は全て撃破、および逃走。我々の勝利だ》
「……終わったのか、戦争が………」


  胸の中が空洞になってしまったように、虚しさが私の中を吹き抜けていくのが分かります。
 緩慢な動作で天井のハッチを開け、上半身を外へ乗り出しました。
 あちこちで煙が立ち上る戦場を眺めながら、私は何も生み出すことのない戦争の無益さに感じ入ります。
 そして狭いコックピットへと戻り…………一人、泣きました。


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 操作難度の高いゲームもいいですが、やっぱりシンプル操作の方が気楽ですねえ。

 そう思って「カスタムロボ」を久々に遊んでたら、聞こえたんですよ。またあの声が。そしてちょうど今、5カウントを数え始めたんですよ。5、4,

3、2……

正月におせちを食べました

 あけましておめでとうございます、イトーです。

 皆さま、年始はどのようにお過ごしでしょうか?
 年明けといえば、それはもう大変めでたいことです。
 彩り鮮やかなおせち! 集まる親戚! 弾ける子供の笑顔!


 私は実家のネコと寝正月です。


 親戚で集まる行事もなく、ただひたすら おせちを食べるマシーンと化しておりました。伊達巻伊達巻なます黒豆カズノコ海老海老。事前に母には作りすぎるなって言ったのに。

 三が日はもうずっと三食がおせち、オヤツもおせちで夜食におせち。もうおせち以外の食べ物が恋しくて恋しくてたまりませんが、つい間食をしようとすると、母が余計なリソースは割くなとばかりに無言でおせちとすり替えてきます。

 私も大人なので快く箸を取りますが、内心は独房の壁をスプーンで掘る死刑囚です。こうなるとだんだん心も病んできて、謎のナレーションを呟きながら食を進めていくことで無聊を慰め始めます。

『海が3でおせちが7。繰り返す、海が3でおせちが7だ!』
『ダメです、押し切られます!』
『いやだーっ、母さん、母さーーーん!』

 まあこの地獄を作り出したのが他ならぬ我が母なんですが。

彼我の戦力差は確かに圧倒的ではありましたが、一方でこれまでの地道な攻撃が効果を表し、僅かではありましたが敵軍の黒豆師団の一角を崩しつつありました。見ろ、奴らは無敵じゃない。無尽蔵にも思えるが、食品である限り終焉はあるのだ! 民よ、我らが同胞よ、今こそ我らが食欲を示すときである!

 とか何とかいう脳内鬨の声と共にイトー軍の全神経が咆哮しました。押し寄せるドーパミンが栗きんとんを飲み込み、アドレナリンが海老を喰らい、エンドルフィンが煮物を駆逐していくその様はまさに戦争。表面上は無表情でおせちを食べ進めているだけですけど。

 ややして正気に戻った時、目の前には空になった重箱と、ずしりと重い腹がありました。
 そうか、私は成し遂げたのだ。
 残るは痛いほどの満腹感と仄かな達成感。見たか我が軍の底力、とばかりに母を見やると、何故か母はニッコリと笑って冷蔵庫を開きます。ああ、そんな、ウソだ。どうして!

 だから――作りすぎるなって言ったのに!

 杯を血で満たすように、瞬く間に補充されていく重箱。それを光のない目で見つめながら、母は言います。地に民が栄え、天に日輪が輝き続けるように、三が日が続く限りおせちは滅びぬ、と。

  

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 収集がつかなくなってきたので筆を置きます。
 結局、おせちは完食できないまま家を出ました。あとは実家に残る姉に託します。

 2017年もよろしくお願いいたします。

Surface Pro 4 を買いました

 こんにちは、イトーです。
 原稿執筆前の手慣らしです。

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Surface Pro 4 を買いました

 なぜか?

 以前まで使っていたSurface Pro 3 が壊れたからです。
 突然の死でした。いつものようにブラウジングしていたら、急に暗転する画面。静まるファン。冷える臓腑。
 その瞬間の、私の内心を想像していただきたい。
「おーい、どうした……?」と様子を伺った直後に事態の深刻さを察して、電源ボタンを乱打する私。

「逝くなー! 帰ってこーーーーい!!!!」

 Surface。私のSurface Pro 3。ウソだ、どうしてこんなことに。今までともに過ごしてきた2年間の思い出が嵐のように脳裏を過ぎ去っていきます。初回起動時の「こんにちは」の画面。初めて買ったときはまだWindows 8.1だったね。Microsoft Wordが処理落ちしないことに驚いたっけ。嵐の中、君を運んで落としてしまったときに画面を割ったことは今でも夢に見る。君が新品同様で返ってきたとき誓ったんだ。今度こそ大事にするって。

 ああ、それなのに! どうして!
 畳にSurfaceを敷いて電源ボタンを何度も押す私は、さながら砂浜に倒れる恋人を心臓マッサージするかのようでした。(傍で見ていた同居人談)
 その後のことはあまり覚えてないんですが、同居人(男です)が語るにはしきりに「何もしてないのに! 何もしてないのに!!」と叫びながらジタバタしていたそうです。あとなぜか冷蔵庫からSurface Pro 3 が出てきました。よく冷えてました。たぶん熱暴走したパーツを直してあげようとしたんだと思います。しなびたミミズに水を与えて生き返らせようとする子供みたいだな……。

 そんなこんなでSurface Pro 4、占めて13万円也。
 全く予想だにしなかった出費にもうほんとグンニャリです。スペックも大して差がないし、変わったところといえば排熱効率くらいじゃないでしょうか。
 しかしこのままだと、私はただ不注意から新たに10万円をドブに捨てた悲しい道化みたいなので、後付けでもどうにかSurface Pro 4 を買ってよかった!!!!」と思えるような理由を挙げていきたいと思います。私はまだ負けていない。

 

Surface Pro 4 のここがいい!

初めに断っておくと、Pro 4 ならではの良いところはあんまり思いつきませんでした。そもそも発売してからもう1年経つし、今更差分点の記事を挙げても需要がない。

 ただWindows Hello」と名の付いた顔認証ログインシステムには非常に感動しました。
 何といっても、電源を点けた後はフリーハンドでデスクトップまで行けるのが気持ちいい。顔認証自体もすごくスムーズで、顔位置の調整も必要なくログインしてくれる精度です。『ラブプラス+』を数年ぶりに立ち上げたら顔認証の際に『あっ、イトー!……のお父さんですか?とのたまった凛子とは比較になりません。顔が似ている人間を近親者として判別するそうです。私は傷ついたよね。

 あとは先述した通り、排熱効率が段違いによくなりました。
 Surface Pro 3 はとにかくCPU付近に熱が集まりやすくて、うっかり動画エンコードでもすれば目玉焼きが焼けそうな温度になりました。しかもファンがうるさい。
 それに比べるとSurface Pro 4 は今のところ熱はほとんど溜まらず、ファンもそよ風程度です。店員さん曰く「ファンのパイプは縦横無尽に内部を走っているおかげで、効率よく冷ませるようになったんです!」とのこと。つまりサメにおける奇網みたいなものですね。
 これは本当にありがたいことで、映画に例えるならSurface Pro 3 のファンは『マッドマックス 怒りのデスロード』なんですけど、Surface Pro 4 は『いつかティファニーで朝食をくらいの優雅さ。
 Surface Pro 3 はよく熱暴走で落ちてましたけど、Pro 4 はこのことで結果的にPro 3 より長い寿命を獲得したんじゃないでしょうか。つまりPro 4 に買い替えて正解。大勝利。

▼おわりに

 Surface には購入してから45日までしか入れない保険(1万円)があるんですが、忘れないうちに入っておこうと思います。
 Pro 3 の時は1万円を惜しんで5万円の修理費を払うことになったので、今度こそ。まあ結局そのあとまた壊れたんですけど。

流しソーメンBARのお話です

 こんにちは、イトーです。

 

 先日、池袋の「流しソーメンBAR」に行ってきました。

 読んで字のごとく流しソーメンが食べられるバーです。涼しげ。
 店内には竹製のレールが縦横無尽に引かれていまして、その中を水流とソーメンが流れるという作りです。

 お値段は1時間で1500円制。めんつゆの入ったお椀片手に店内をうろつきながら、好きな時に好きなところからソーメンをつまんで食するというシステムが楽しげです。ところどころにある小椀にある薬味も自由に使っていいそうです。

 店内を見渡すと、茶屋のような長椅子がいくつか置かれているのに気づきました。ここで脚を休ませていってほしいという店主の気遣いでしょう。椅子や、点々と配置された小卓は木製で、裸木ながらしっかりした造りだと思ったら、同行した友人(ルームシェア中の男です。元陸上自衛隊員)いわく、ヒノキ製とのことでした。……この男はときどき妙な造詣を発揮します。

 和風で統一された域な店内を見渡しながらソーメンをすすっていたら、友人がぼそりとこんなことを呟きました。

「この流しソーメンの水は、店内を循環してるってことなのかね」
「……まあ、そうなんじゃない。常に新しい水を出し続けてたら水道代すごそうだし」

 ちなみに水とソーメンのスタート地点は複数設置されていて、もし誰かが排出されるソーメンを上流で全て独占したとしても、別の源流から本流へと適宜ソーメンが合流し、分け隔てなく行き渡る仕組みになっています。

 友人は流れゆくソーメンを眠そうな目で眺めながら、
「店内には俺たちを含めて8人の客がいるじゃん。で、みんなそれぞれ同じ箸をずっと使い続けているわけだけど」


 やめなよ。
 ちょうど箸で掴んだソーメンを戻すわけにもいかず、私は複雑な胸中でお椀に麺を入れました。
 すこし薄くなっためんつゆに浸ったソーメンを眺めながら、それを口に運ぶべきか迷っていると、不意にスピーカーからししおどしの音が響きました。次いで若い男のアナウンス。

『ご来店中のお客様にお知らせします。水の定期入れ換えを行ないます。作業は10分ほどで終了いたしますので、ご迷惑をおかけしますがしばしお待ちください。ご協力のほどよろしくお願いいたします。繰り返します……』

「あー」
 唸る友人。この男の感情の機微は昔からいまいち掴みづらいのですが、おそらくは感嘆のため息でしょう。
 そのまま竹製のレーンを眺めていると、次第に上流からの水(とソーメン)が減っていき、やがて完全に途絶えました。それから更に五分も待つと再び透明な水が流れ始め、元の水量へと戻った後、遅れて充分にほぐれたソーメンが流れてきました。

 おあずけを喰らっていた客の面々が箸を掲げ、沸き立ちます。

「水だ! 新鮮な水だ!」
「ソーメンもあるぞ!」
「茗荷……葱……山葵……! へへ、どれから試そうか迷っちまうな!」

 あくまで紳士的に竹のレーンへ群がると、皆が皆つるつるとソーメンを食し始めます。濃いめんつゆに浸し、首を持ち上げながら生き生きとソーメンを啜る様はさながら鵜のようです。
 私たちもこうしてはいられません。私は友人と目で示し合わせると、穏やかな足取りで流しソーメンへと向かいました。

 蛍光灯の明かりを受けてきらきらと輝く清流を、白磁のように艶やかなソーメンが滑らかに流れていきます。その一筋一筋を掴もうと、漆塗りの箸が次々と伸ばされます。
 その涼やかな光景はまるで、真夏の冷たい石清水を泳ぐ岩魚を追うかのようでした。

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というBARをルームシェアの友人に提案したところ、「冬も営業してんのそれ」と訊かれました。
 ……しゃぶしゃぶとかしてるよ。流ししゃぶしゃぶ。

ゲーム業界志望の学生さんへのアドバイス ~一次面接編~

 こんにちは、イトーです。

 就職活動の季節になりましたね。
 弊社、一応ゲーム会社ですので、ゲーム会社志望の学生さんがたくさんいらしてくださいます。ありがたいことです。
 私は弊社の中では底辺を這いつくばるゴミ虫のようなプランナーではありますが、人が足りないこともあって、それなりに面接官として招聘されることも少なくありません。(もちろん私以外に、ベテランのプランナーも同席しますのでご安心ください!)

 面接をしていてとみに思うのは、「もったいないなあ」という一言です。
 きっと私のようなゴミカスプランナーとは比較にならないほどのポテンシャルが皆さま新卒様にはあるはずなのに、それが正当に評価されることなく、一次面接で消えていく。その光景に幾度となく歯噛みしてきました。
 本稿では、ゲーム会社のプランナーを志望する皆様方に対し、どのように立ち居振るまえば一次面接を突破できるか説いてみようかと思います。
 なお酔っ払いながら書いてますので、参考にするのはそこそこにしておいてください。

ゲームへの情熱

 まあ、ゲーム会社ですので。
「情熱」と言うと急に宗教的なアトモスフィアを感じますが、これで馬鹿にできない概念です。
 会社にも依るでしょうが、一時面接レベルでしたら面接官のほとんどはゲーマーです。ゲーマーが重視することと言えば、「こいつはゲーム好きなのか?」ということでしょう。
 もちろんゲーム好きでなくともそれを補う能力(何かプロジェクトを成功させたとか、英語がペラペラだとか)があれば評価されるでしょうけど、結局最終的な評価基準は「この人と一緒に仕事をしたいか」という一点。
 ゲーマーが好きなのはゲーマーです。よって、ゲーム好きな自分を演出するに越したことはありません。

 ここに至っては「ポケモン」「ドラクエ」といった超メジャーゲームは評価対象となりづらいので注意してください。もちろん「ポケモン世界大会出場」とか「5V以下はクソ」みたいなやり込みっぷりがアピールされていれば別ですが。
 なおイトーはたまたま遊んでいた「Gears of War」「レジスタンス」あたりが評価されて、面接を通ったようでした。GoWはともかく、レジスタンスは評価対象としてはどうなのだろう。いや、私は好きなんですけど。

コミュニケーション能力

 評価基準に挙げられる割に、実態がよく分からない代表の要素です。
 プランナーは他の職種(プログラマ、デザイナー)と折衝することが大変多い職種です。プランナーというのはプログラムもデザインもできない代わりに、全体のゲーム設計を行なって、その実現を各職種にお願いする立場ですからね。そこに対人折衝能力が必要になることは、言うまでもないでしょう。

 さて、では面接で「コミュニケーション能力」を評価されるにはどう振る舞うべきなのか?

 リラックスしてください。
 非常にベタなアドバイスですが、真理なのだから仕方ありません。緊張を解き、笑顔とほがらかな雰囲気と共に、気さくかつテキトーにお話してください。まるで友人に対して対話するように。そうして柔らかい雰囲気を演出するだけで、面接官はあなたを「コミュニケーション能力がある人材」として評価します。
 逆によろしくないのは、緊張しすぎて判を押したような返答しかできない人材や、訥々としか喋れない人間です。リラックスする手法についてのアドバイスはできませんが、とにかくテキトーでいいので滔々と喋るよう努めてください。

 

エンタメ嗜好

 ゲーム開発者というものは、ゲームにのみ詳しくあればよいものではありません。あらゆるエンタメに通じ、そこから有益なインプットを行い、開発するゲームにフィードバックできる素養が必要なのです。何かすごいマジメなこと言ってますね私。
 さて、教養としてのエンタメとして重視されるものは次の通りです。
「映画」「アニメ」「漫画」「小説」。
 どんなものを好いていればいいかは、もう完全にご志望の会社に依ると言えます。たとえば日本一ソフトウェアさんやコンパイルハートさんであればアニメ的素養が重視されるでしょうし、海外向けタイトルを出しているメーカーさんであれば洋画の鑑賞履歴を問われるでしょう。

 ちなみに私は就活当時、何故かゾンビ映画をひたすら見ておりまして、面接ではロメロの「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」をひたすらこき下ろし、「ショーン・オブ・ザ・デッド」をベタ褒めしたら受かってました。多分社長がゾンビ好きだっただけだと思います。今頃採用したことを後悔しているのではないでしょうか。
 どうでもいいですが、「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」は実に……こう、何というか……怪作でしたね!
 ゾンビアポカリプスに覆われたアメリカで、ビデオカメラが趣味の主人公がひたすら終末の日々をカメラに収めるという内容なのですが、仲間がゾンビに襲われてもカメラを回し続けるその一貫性。「カメラはいいから助けて!」と怒鳴られるシーンがありますが、本当にもっともだと思います。
 ゾンビものでいうと、他には「ゾンビランド」が好きです。遊園地に逃げ込んだ先で観覧車に跳ね飛ばされるゾンビ共や、迫りくるゾンビの波をマグナム二丁拳銃で一掃するオッサンには私の中の6歳児が大興奮。

 話が逸れました。

 

開発経験はあった方がいい

 当然ですね。
 RPGツクールをはじめ、Unity、Cocos2D、UE4、Cry Engine、エトセトラエトセトラ……。
 アマチュアでも触れるゲームエンジンが世に溢れたこのご時世、そのうちどれかに触れていたことがあるかないかでは、雲泥の差が存在します。
 本当に少しでいいので触っておけば、他の新卒との差別化が図れます。
 仮に掘り下げられることがあったとしても、せいぜい「何を作ったか」「どんなところに苦労したか」という程度。
 そこに対する回答さえ用意しておけば、ホントに小指の先で掠めたレベルでも気づかれることはありません。多分。

 ちなみに当時の私はUnityを触っていました。適当な板の上で球体を転がし、球体が落ちたらゲームオーバーという単純なゲームです。深みを出すためスペースキーで球体がジャンプできるようにしたものの、一段ジャンプした後に再ジャンプを禁止する方法が分からず、無限にジャンプできるという苦行に等しいゲームと化しました。プレイヤーの体力かスペースキーの耐久が摩滅した時が真のゲームオーバーです。

 

そして具体例

 色々まくしたててはみましたが、果たしてそれら上記の条件を満たした面接はどういう形式になるのでしょうか? 具体例を私の完璧なる脳内でシミュレーションしてみました。


「どうぞおかけください。ああ、リラックスして頂いて結構です」
「そうですか? ありがとうございます、実はけっこう緊張してたんですよー」
「さっそくお尋ねするのですが、まあ、弊社ゲーム会社でして。ゲームについてお伺いしようかと思うのですが、特にお好きなジャンルといえば何になりますでしょうか?」
「うーん、アクションやシューターですね。RPGやADVもしますが……ゲーム性が高いタイトルを主に遊びます」

 アクションゲームは主に「ゲームらしいゲーム」として高い評価を受ける対象になりがちです。もちろんRPGやADVも立派なゲームですが、よほど好きな理由を明確に答えることができなければ、評価を受けることは難しいかもしれません。


「なるほど……(メモを取りながら)では、ここ最近遊んだゲームを教えていただけますか」
「はい。最近ではPS4でダークソウル3やアンチャーテッドの新作、後はバトルボーンとオーバーウォッチを遊んでますね」
「ほほう」

 海外の主要新作を軒並み挙げて、グローバルに高いアンテナを立てていることをアピールします。もちろんゲームの感想・分析を問われることもありますので、事前に自分の中でどこが面白かったのか整理はしておいた方がいいでしょう。

「他ではOculus、Vive、PSVR」
「PSVRってまだ出てませんよね」
「それからXbox 360の重鉄機、PSのパネキット、SSの宇宙戦艦ナデシコ、MDの魔導物語MSX沙羅曼蛇……」
「最近のゲームって言いませんでしたっけ」

「まだ100年も続いていないゲーム業界なんて、考古学的・宇宙的観点からすると閃光のようなものでしかありませんよ」
「なるほど。ところでXbox Oneのタイトルは?」
「Oneは持ってないです」

 Oneはとても素晴らしいプラットフォームですが、持ってなくても減点にはなりません。ご安心ください。

「では、最近のゲームは満遍なく遊ばれているようですね」
「はい」
「ゲーム以外についてもお伺いできればと存じますが、好きなエンターテイメントといえば何が挙げられますか?」
「はい。映画、アニメ、何でも見ますが……最近で特に注目したのはディズニーの『ズートピア』ですね。人種差別をモチーフにしたストーリーラインはもちろんのこと、エンディングに登場する歌姫ガゼルと、そのバックダンサーに上半身が隆々とした虎をチョイスしたことはすさまじいセンスと言わざるを得ません」


 注:私の個人的感想が含まれています。
 劇中に「ガゼル」と呼ばれるカリスマソングシンガーが登場するのですが、歌の完成度は当然として、シンガーにガゼルというアニマルを選出したことが素晴らしい。確かにあのアイシャドウじみた目とその流し目は、カリスマアーティストにふさわしい色気を醸し出していますよ。
 バックダンサーに虎を選んだのもなかなかのセンスです。筋骨隆々としたその骨格に、猫家特有の艶っぽさが伴う絶妙なバランス。しかもそれが四匹、細やかな矮躯のガゼルを囲んで力強く踊っている絵面。画が引き締まるとはこのことです。
 ゼェハァ。
 何の話でしたっけ。


「何かご自身で創作をなされた経験はございますか?」
「そうですね……(考える間)、色々ありますが、ひとまず今は自身でゲームを制作しています。RPGツクールRPGを作りつつ、Unityで3DでUnityちゃんでVRなアレコレを開発し、UE4ではマテリアルがSubstanceなゴニョゴニョを構成しています。Game Jamにも参加して、そのたび色々作ってますよ
「素晴らしい! それらはもうどこかに公開されているのですか?」
「はい、Unityで作ったアプリはApp Storeに登録済です。他にもSteamでインディーズデベロッパー登録して、そこでも販売中です」
「最高ですよ貴方は!」
「いえいえ、恐れ入ります」
「それでは、本日はお疲れ様でした。面接の結果は後日お伝えさせていただきます」

 

 面接は以上です。
 大体これほどの人材であれば、文句なしに一次面接を通過するのではないでしょうか。
 就活でお悩みの方は、是非参考にしていただければと思っております。
 まとめると「リラックスしてペラペラ喋れて」「ゲームをたくさん遊んでて」「他のエンタメも造詣深く」「何かしらすでに開発に挑んでいる」というだけです。簡単ですね?
 それでは大変なことも多いかと存じますが、是非本稿を参考にし、ゲーム業界へ飛び込んできてください! 業界はフレッシュな人材を求めています!


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 というわけで、ウィスキーを流し込みながら大体30分くらいで書き散らした文章でした。グヘッヘ。
 ではまた。

願いを叶えるお話です


 こんにちは、イトーです。

 寝る前に文章練習のためにフィーリングで書いた記事ですが。
 何というか、まあ、自分でもよくわからない文章になりました。捨てるのももったいないので、掲載します。

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「もし何か1つ、願い事を叶えることができたなら」という質問があります。
 もう古今東西で100該回繰り返されたんじゃないかな、というくらい陳腐な質問ですが、ちょっと深く考えてみたい。

 仮にそれが人智を超えた技術で実現したものとして、願いは何かしら定量のリソースを費やされて叶えられるものになるんじゃないでしょうか。
 要するに、「金持ちになって美女をはべらせてこの世を統べる王となりたい」という願いがまあ平均だとして、それを1000リビドー(今作った単位)としましょう。

 つい先ほど私は洗濯した布団カバーを敷布団に被せながら「布団カバーを一瞬で装着できる能力が欲しい」と願ったんですが、まあこれは1リビドーくらいが妥当でしょう。
 そいでランプの精に私が「布団カバーを一瞬で装着できるようになりたい」と願ったとして、それが1000リビドー……つまり1000倍のリソースがその実現に費やされる計算になります。

 すごい。
 もう、それだけあれば何でもできます。

 例えば目の前に布団がなくとも遠隔操作で布団カバーを装着できるようになるでしょうし、自分のでなく他人のでも自在に装着できるようになるでしょう。もちろん一度に1000枚くらいの布団カバーを装着できるくらいのパワーもあるはずです。もういっそ私の意志に関係なく、自動で布団カバーが装着されるくらいの勢いです。オート布団カバー装着スキル。

 そしたらそれを商売にすることもできるでしょうし、世紀の布団カバー職人として世界中のTVから取材もされるでしょう。
 60億の全地球人類は「布団カバーの装着」という労苦から解き放たれ、その分の時間が個人や集団を幸せにするために費やされることになります。仮に1回の布団カバー装着を5分として、それが×60億なので、ええと1日に300億分。秒に直すと180兆秒の余裕が毎日生まれるわけです。計算合ってる?

 仕事に追われていた父親は家族とのかけがえのない時間を得て、日本人の睡眠不足は解消され、ゲームの開発期間に余裕が生まれ、大統領は政治施策に回す思考時間が増え、1日は25時間になります。
 そう。どんな願いを抱こうと、得られる結果に変わりはないのです。

 もしあなたがどんな願いでも叶えられる状況になったとしても、迷うことはありません。好きな願いを口にしましょう。その願いはどんな形にせよ、同じだけのリソースを持って叶えられるはずです。

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 寝ます。
 それじゃ。

ぼくは大人になったら漫画家になってると思います

 こんにちは、イトーです。

 

 この間、子供のころの自分に会いました。
 より具体的に言うと、久々に実家に帰ったら小学校の文集が発掘されたことを、ちょっとポエティックに表現してみました。

 書き出しはこうです。「ぼくは、大人になったら漫画家になってると思います」。

 なってません。というか絵も描けない。何かすまんな。
 読み進めていくうち、次第に当時の記憶がふつふつと泡のように脳の奥から沸き上がりました。やがてそれらが寄り集まって精細さを増していくのが分かります。使われていなかった灰色の脳細胞が活性化し、2色から16色へ、256色から更に色味を取り戻していくかのよう。

 気付けば、まるで目の前に小学生の頃の私がいるかのような臨場感で、私はその文集を読み進めていました。
 イトー少年の第一声はこうでした。少年らしく張りが合って甲高い、弾むような声でした。

「いまのぼくはどんな漫画を描いてるの?」

 描いてません。そもそも漫画家になっていません。すまんな。
 イトー少年は私の返答にたいそうショックを受けているようでしたが、私の方が傷ついています。オトナの現実をわざわざ言葉でなぞり直すことに何か意味があるのか。
 しかし少年期の私、よく見ると意外と美少年です。この頃から長めの髪は漆を塗ったように艶やかで、前髪に隠れた目は利発そうな輝きを秘めています。
 相手が私でなければ「きっと将来は大成するだろう」と小さな頭を撫でてあげたところです。実際はまだ大成していないので、自分を「神童」と勘違いして少年期を過ごしていただけという可能性もなきにしもあらずで、つまりこの話はやめましょう。きっと大成するよ。

「どうして漫画家になれなかったの?」

 ストレートに訊いてくる子供です。その質問が10年後に返ってくると理解しているのでしょうか。私はぶっきらぼうに返答します。

「そりゃあ、今のお前が絵を練習してないからだよ。俺のせいだけにしないでよ」
「ええ……でも、なんかそういうのは、こう、いつの間にかうまくなってるものだと思ってた」

 すごくわかる。同時に、私が漫画家になれなかった理由も。

「じゃあ結婚はした?」
「したい」
「大人って20才くらいになったら皆 結婚するものじゃないの?」
「俺もそう思ってたんだけどなあ……」

 

  そう答えた瞬間、妙な感覚に襲われました。身体が軽くなるというか、それとも現実感が希薄になるといったほうが近いかもしれません。


「そういえば、今は何のお仕事をしてるの?」

「会社員」と答えかけた瞬間、私は恐ろしいことに気づきました。僅かではありますが、私の身体が透けてきているのです。

    同時に私は理解します。そう、夢に満ち溢れたこの頃の私が今の私のような現実を受け止めきれるはずは到底ありません。結果として「未来」の私の存在可能性が薄れてしまっているのでしょう。
 最悪の場合、若さゆえに勢いでイトー少年が命を絶ってしまうかもしれません。この頃の私は、瀕死になることで謎のパワーに覚醒したり生まれ変わることに希望を抱いていた時期だったでしょうか? もう少し後だった気もしますが、確証はありません。
 しばし悩んだ後、私は「そうだ!」と腿を手で叩きます。

「将来の君は、ゲームクリエイターになっているよ!」

 

    それは私が少年の自分に誇れる、数少ない誇りの一つです。淀み始めていたイトー少年の瞳に、再び輝きが灯るのが分かりました。


「すごいすごい! ゲームクリエイターってどんなことをするの? キャラの絵を描いたりするの?」
「いや、だから絵は描けないんだって」
「じゃあプログラムをするの?」
「プログラムも打てない」
「……じゃあ何をやってるの?」
「それ意外の全部というか……」プランナーは基本雑用というか。

 また私の透明度が上がってきたので、「わー!」と叫んでその場をごまかします。不透明度50くらい。イトー少年が狂人を見る顔つきで身をすくめたのにややショックを受けますが、相手も自分だと思えばそこまで気にはなりません。

「……他に何かないの? 例えば、最近読んだ漫画とか」と少年。
「『寄生獣』読み直してる」
「それ、ぼくが今読んでる漫画……」

 名作はいつ読んでもいいものです。イトーレイヤーのアルファ値がまた上昇。私は気を取り直し、

「あ、そうだ。そういえば『寄生獣』2014年くらいにアニメ化したよ」
「え? アニメなんて観てるの? 大人なのに?」
 
 またイトー少年の未来期待値が下がる音が聞こえました。もはや私を挟んで、10m先の八百屋の看板の文字が読めるほどに存在感が希薄です。金のオーブをこっそり偽物とすり替えてこの場を去ってしまいたい。

    後がありません。このままイトー少年に世を儚まれるわけにはいきません。しかし生き汚く、退屈な大人になってしまった私が彼に希望を見出させることが果たして可能なのでしょうか?
 少年期の私が何を願い、何を切に祈っていたか?
 記憶を10年以上前まで遡り、そして私は気付きました。私が目の前の彼の延長であること。そして、私の骨子たる部分は10年経っても何も変わるところがないことを。

「……ひと月に」ぼそぼそと私はイトー少年に呟きます。「お前、ひと月にいくら小遣いをもらってる?」
「え? ご、500円……」

 鼻にツンとくる刺激がありました。その痛みはじわりと目まで染み通り、私は涙を零します。500円。懐かしい単位でした。この時から本とゲームが好きだった少年は、いったい500円で何ができたでしょうか。かけがえのない少年期の数年は、たったそれだけの理由で無為に過ぎていったのです。

「……20万」
「えっ?」
「今の俺の月給だ」

 みなし残業込みだがな、とうそぶき、私は踵を返します。元の時代に戻るために。ここにはもう留まる理由がないと示すように。
 この時代との縁が薄れていっているのでしょう。遠ざかる過去の気配に紛れて、イトー少年の声が私の背を追いました。それが何という台詞だったかは分かりませんが。

 ただ、今こうして私がAmazonでゲームと本を買いあさっているということは、そういうことなのでしょう。未来は守られたのです。希望という輝きによって。

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月給の額はてきとうです。(念のため)